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 oddⅤ -呪われし花嫁と天空城の秘宝-

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(重要)更新停止のお知らせ

サイト版のoddVは3/5をもちまして更新を停止いたします。
無期限停止です。
理由ですが、コメントを見ていただければわかる通り、外国人の方々によって荒らされています。
これはURLで検索すると、複数の掲示板に貼られていて、それから外国人の方々が誘導されたのだと思います。
しかし、このような心無い外国人の方々のコメントを消すよりも、サイト版もろとも消してしまったほうがいいのではないか? とおもいました。再発のことを考えますと、これが一番です。

閉鎖時期は未定ですが、少なくとも今後こちら側での更新は一切致しませんのでご留意ください。
続きは小説家になろうでどうぞ。
http://ncode.syosetu.com/n9399cx/

このたびは、皆様に不快な思いをさせてしまうこととなりましたが、大変申し訳ありませんでした。

2016年3月5日
巫夏希

第六章 14

 それを聞いて、アルスは考える。
 確かに先ほどの話し合いにグリディアスはいなかった。しかしながら、あそこにいる人間が全員とは限らない。もしかしたらまだ戦争に出る予定のある人間は居るのかもしれない。そうなれば、グリディアスもそこにいて機会を伺っている。そう考えるのが普通だった。
「……問題は、それからだね。君が言うその魔術師がもし戦争に参加しているのならば、問題だ。だって、危険だからね。まあ、戦争に参加するほどだから実力は折り紙付きだろうけれど、それにしたって問題だ。常識を疑いかねない。だって、君の話通りなら、君たちに呪いをかけてしまったのだろう?」
「ああ、そうだ」
「そんなこと、許されるわけがない。人間に呪いをかける? 同じ国の人間だというのに、どうして仲良くできない?」
「……それは、そっくりそのままお返しするよ。今、この世界で二つの国が争っているのが、その言葉だけで解決できるわけがないだろう? つまり、そういうことだよ」
 言葉だけで解決できるほど、アルスたちの問題は簡単ではない。
 そしてそれは、この世界全体の問題の解決法にも合致する。
 二つの国が繰り広げる戦争。それは、言葉だけではもはや解決することは無い。
 解決するためには、どちらかが良い結末を迎えるしかない。
「……私だって、どうしてこの戦争を起こす必要があるのか、解らないときはある」
 ミリアは唐突にそう言った。
 アルスは踵を返し、彼女のほうを見つめる。
 彼女は涙を零していた。この状況を見られてしまえば、まるでアルスが泣かしてしまったような状況に誤認されてしまうことも考えられるが、断じてそんなことは無い。あくまで、感極まってしまったと思われるミリアが、ひとりでに涙を流した。ただ、それだけのことだった。
 ミリアは涙を拭いて、頷く。
「……ごめんなさいね、つい、感極まってしまって。でも、事実なのよ。この戦争は、どうして引き起こされるのか、いまだにはっきりしていない。ただ国王が、戦争をすると言ったから我々は戦争をするしか無いだけ。けれど、国民はそれでは納得などしてくれるはずがない。だから、国民には嘘の理由を流布している。ただ、それだけのことなのよ」
「はっきりしていない、ということか? 戦う理由が」
 しかし、アルスは国王から話を聞いていた。
 敵国であるムロクスが、世界を危機に陥らせかねない魔術を使おうとしている、と。
「それはデタラメよ。そんなことはあり得ない」
 しかし、その考えは即座に否定された。
「なんでそこまですぐに解るんだ? 可能ならば、その理由を教えてくれないか」
「ムロクス王国には魔術が発達していない。それは、このベスティリア王国よりも、魔術が流行していない、ということを意味しているのよ。魔術を研究している機関もない。国が総力を挙げてやっていないのならば、その先には何がおのずと浮かんでくるかしら? 旅人さん、あなたならすぐに解るものだと思うけれど、そのあたり、どうかしら?」
「……つまり、国の規模的に、ムロクスにそれほどの規模の魔術を行えるはずがない。そう言いたいのか?」
「もちろん、秘密裡に実行している場合は何も言えないけれど。地下に巨大魔術研究施設があるとか、ね。ただ、地下にそのような施設を建造している様子も無かったから、それも無いと思うけれど」
「ずいぶんと詳しいんだな」
「ムロクスとベスティリアは敵対関係とは思っていても、この世界にある国のすべてだからね。そりゃあ、それなりに関係を築いておかなくてはならないから。仲が悪いのは確かだよ? でも、それなりに交流は続いているということだよ」

第六章 13

「……ああ、済まない。済まなかった。ちょっと興奮してしまって。ほんとうはあまり興奮はしないのだけれど、まさかここまで早く見つかるとは思っていなくて……」
「ああ、そういうこと」
 ミリアは小さく溜息を吐いて、テーブルに置かれていた小さい本を開く。
 それが何であるか気になったアルスは、首をかしげる。
「それはいったい何だ?」
「これ? これは、聖典よ。聖堂教会の聖典。これをシスター、または神父は、毎朝読み上げるそうよ。だから、もう覚えてしまっているともいわれている。聖堂教会に所属する人間は聖典を見ずその内容を読み上げることで、はじめて一人前になれるともいわれているほどだからね」
 それはアルスも聞いたことのあることだった。彼らも聖堂教会ではないが、かつて別の宗教を信仰していて(それは今も現在進行形ではあるが)、聖堂教会が何をしているのかは、少しは仕入れていた。というよりも、ほかの宗教の情報は仕入れておく必要がある。特に、聖堂教会は世界の半分以上の人間が信仰している一大宗教であるから、嫌でも情報が入ってくるものである。
 ミリアの話は続く。
「この聖典は読んでいてとても興味深いよ。知っているかしら? この聖典に描かれている『神』は世界を作り上げたのではなく、闇に覆われていた世界を浄化した存在だといわれているのよ」
「闇の世界を……浄化した?」
「そう。この世界を作り上げたのは別の存在。そして、その世界はいつしか闇に覆われてしまった。その理由はなぜか、それは定かではない。そこまで記されていないからね。そして、その闇を世界から拭い去ったのが――」
「聖堂教会の信仰する、神」
 その通り、と言わんばかりにウインクするミリア。
 聖堂教会の信仰は、アルスは形しか知らなかった。神が居て、神の代行者たる神父が居て、神父にシスターが仕えて、人々は神父を経由して神に祈りをささげる。一般的な宗教のスタイルともいえるかもしれないが、一方で、それを確立したのは聖堂教会が最初だといわれている。
「ああ、確かに宗教学の人間から言えば、聖堂教会の信仰形式はかなり画期的だったのよね。そこまで詳しくは知らないけれど、それが聖堂教会以後に誕生した宗教……専門家から言わせれば、『新制宗教』と名付けられるらしいけれどそれは一旦置いておいて、その、新制宗教は殆どが聖堂教会の信仰形式を準えているらしいわ。……それほどに、聖堂教会は画期的だった、ということよね」
 話が逸れてしまった。
 アルスはそう思って、話を切り出した。
「ところで……そのグリディアスなんだが、どこへ向かった?」
「どこへ向かったも何も、確か彼も戦争に参戦するはずだったけれど。……あれ、そういわれてみると、さっきの打ち合わせに出ていたっけな、彼。でも、君が聞くってことはたぶん出てきていないよね」

第六章 12

 アルスは通路を歩いていた。目的地は既に彼の頭の中で決まっているためか、ずんずんと進んでいった。
 そしてアルスはある人間の部屋へとたどりついた。
 一つ深呼吸をして、アルスはドアをノックする。
「はい、どなたですか?」
 ドアの向こうから声が聞こえて、アルスは言った。
「……先ほど、会議に参加していたアルスという者だ」
「入って」
 ドアは開けられ、女性の姿が見えた。
 女性は学者――ミリア・エーデルワイスだった。
 ミリア・エーデルワイスはアルスの姿を見て、首を傾げる。
「冒険者のあなたがどうしてここへ?」
「簡単だ。……だが、この城内で話すことでは無いと考えている。話すことによって最悪国賊と疑われかねないからだ」
「それをこの城で働いている私に話すつもり? 場合によっては、私がそのまま密告する可能性だって考えられるはずでしょう?」
「それはきっと無いだろう。だってこれは、君にも有益な情報なはずだからだ」
「……一応、話だけ聞いておこうかしら?」
 ミリアは一歩後ろにずれて、アルスを部屋へ招いた。
 アルスはそれに大きく頷いて、彼女の部屋へと入っていった。
「……この戦争を止めたいと考えている。そして、そのためには君の活躍が必須だと考える」
「戦争を止めたい? 何を言っているのか解らないのだけれど……。それに、私の活躍が必須、って?」
「この戦争には、ある魔術師が関わっている。俺はそう推測している」
「ある……魔術師?」
 こくり、とアルスは頷いた。
「その魔術師は何を考えているかはっきり言って解らない。だからこそ、慎重にしていかねばならないと考えている。だから出来ることなら王にもこれを進言すべきかと思ったが……追い出されてしまえばそれまでだ。だから今まで言えなかった」
「成る程。それで先ずはこの城に勤務している学者の私に話をしておこうというわけだね? そうすれば何かアドバイスをもらえるのではないか、と思った……そういうことかな?」
「まあ、そういうことになる。申し訳ない。何かアドバイスというか……そうだ、その魔術師のような男をつい最近城で目撃しなかったか?」
 アルスの言葉にミリアは考え始める。
 少しして、ミリアは思い出したように一つ頷いた。
「思い出した。それが君が思っている魔術師なのかは知らないけれど……風変りな恰好をした人間ならつい最近城にやってきたよ。名前は確か、グリディアス」
「そいつだ!」
 アルスは目を丸くして、思わず一歩彼女のほうに進んだ。
 それを見た彼女は驚いてしまって一歩後退する。

第六章 11

「……言いたいことは解るけれど、見つからないことは事実でしょう? 実際問題、それをどうすればいいのか考えないといけない。魔術師を探さないといけないのも解るけれど、戦争に参戦することを了承したのだから、最後まで成し遂げないと。……正直、やる気は起きないけれど」
 エイミーの言葉にカスケルは俯くだけで何も言わなかった。
 どうやらカスケル自体も戦争への参戦は予想外だったらしい。
 第一、アルスたちの中で戦争へ参戦することを了承してもそれを快く思っている人間は居ない。そもそも彼らのもともとの目的をクリアしないといけないのに、これは完全な寄り道になるからだ。
「確かに戦争に参加することは間違っているよ。残念ながら。出来ることなら戦争を回避しておきたい。だが、難しいだろうな……。戦争を回避することで、どう両国の関係が変わっていくかもわからない。もし今回避したとしても未来で戦争が起きる可能性も十二分に考えられるからだ」
「まあ、回避する方向へ進めよう……とまでは言わないわよ。実際、戦争を出来るだけ激化したくないな、って話よ。まあ、別にそれについて私一人で、あるいは私たち全員でそれを言ったところで最終的に戦争は国と国の争い。何百万人単位での争いになるのだから、私たちには何も出来ないかもしれない」
「そうだな。だが、何も出来ないというのは正直言い過ぎかもしれない。実際、一人の行動力を舐めている。国も、エイミーも。俺たちがどう行動しようが自由だと思うぞ」
「自由だとは思うわよ。けれど、それがこれからどうなるかは解らない。俺たちがどう行動しようとも、戦争は始まり、そして始まりあるものには終わりがある」
 エイミーは立ち上がり、ゆっくりと辺りを見渡す。
「……まあ、これ以上深く考えても無駄よね。とにかく、戦争をどううまくやっていくかどうか。そして私たちが全員五体満足で帰ってくることがまず一番の問題ではありますけれど」
 エイミーは溜息を吐いて、アルスのほうを向いた。
 アルスは膝に手を置いて何か考え事をしているようだった。
「アルス、あなたは何か意見があるの? ずっと考え事をしているようだけれど、もし何か一つでも考えがあるのなら教えてもらえないかしら?」
「――やっぱり、戦争を止める作戦を考える必要がある」
 アルスは立ち上がり、部屋を後にした。
「アルス、あなたどこへ向かうつもり!」
「ちょっと調べもの。すぐ戻ってくるから。大丈夫、情報は提供するよ。もしうまくいかなかったらどうなるかは解らないけれど、少なくとも何とかなるとは思う。あくまでも、僕の予想だけれど」
 そう言って踵を返し、部屋を出て行った。
 エイミーは再びアルスに声をかけたが、アルスは何も答えないまま姿を消した。

第六章 10

 アルシアという場所。
 そこが彼らの向かう拠点ということになる。
「……こちらから提示できる情報は以上だ。はっきり言って、アルシアの周辺がどうなっているか、それは定かではない。警備が厳重になっている可能性もある。だが、これはもう戻ることのできない戦いだ。ムロクスが世界を滅ぼす呪術を使っているかもしれない、という情報がある以上、我々は前に進まねばならない。無事に戻ってきてくれれば、たんまりと報酬は払う。だから、よろしく頼む」
 そうして、会議は終了した。

 ◇◇◇

 作戦開始は一週間後と相成った。そのため開始される一週間後までアルスたちは自由に城内を出歩いてよいという許可を得ることが出来た。別にアルスたちがだけがその許可を得たわけではなく、今回戦争に参戦する『傭兵』全員に、である。
「……そういえば、あの中に居なかったわね、あいつ」
 そう切り出したのはマリーだった。
 今彼らが居るのは城内にある宿屋だった。とはいえこの宿屋は城下町にあるそれとは違い、宿泊する客が国王に用事のある立場の高い人間ばかりであるためか、どこか格式の高い様子が見える。
 本来ならば一人一部屋を提供するはずなのですが、と宿屋の女性に言われたがそれはそれでちょっと面倒なことになりそうだとアルスが判断したので、結局男女一部屋づつという結論に収まった。
 そして今、状況を整理するためにひとまず一つの部屋に集まって会議をしている――というわけだ。
 マリーの話は続く。
「あいつ、私の予想だと戦争へ向かう傭兵の中に紛れ込んでいると思ったけれど……。そう甘くなかったわね。それともすでにこの城を出て行ったあとなのかしら?」
「だとしたら魔石が反応しないはずだろ」
 そう言ってアルスはペンダントを取り出す。
 魔石はほのかに点滅を繰り返していた。それは『共鳴』を示しており、魔力の反応を示しているということになる。
「……ミシエラ大陸に入ってこの反応も潰えてしまったが、ここにきてまた反応が強まってきている。これはチャンスだ。きっとあいつはこの城のどこかに居る。そしてペンダントを探しているに違いない。……だとすれば、ここでやるしか方法は無いんだよ」
「やる、といっても当の本人が見つからなければ何の話にもなるまい? 探すだけ探すのはいいことだと思うが……。このまま見つからずに時間が過ぎ去っていくのもひどい話とは思わないか」
「エイミー、それは解る。だが、俺たちには俺たちの矜持があるんだ」
 アルスの代わりに答えたのはカスケルだった。
 普段はアルスばかりに言わせていたカスケルだったが、ここでは違った。アルスが言うよりも早くにカスケルが言葉を発したのだった。

第六章 9

 見ている気配を感じ取ったのか、男はその直後剣のほうを向いた。
 不味いと思ったアルスは男がそちらのほうを向くよりも早く、王のほうに視線を移した。
「君は確か……クロウ君だったか。クロウ・アルザンツ。その巨大な剣で竜をも斬ることが出来ると」
「ああ、『ドラゴン殺し』に斬れないものはない。それは使ってきた俺が証明できる。……それを話すために、俺に話を振ったわけでもないだろ?」
「それもそうだ」頷いて、王は話を続ける。「私が言いたいのはそうではない。主戦場と、実際そこまで向かう交通手段、およびそのスケジュールについて話をしに来たということだ」
 そう言って王は地図をテーブルの上に敷いた。
 テーブルの上に敷かれたそれは幾つか印がついており、それが何かの目印になっているようだった。
「ここについている印、ここには何がある?」
「……確か、マリエールですよね? カジノとか劇場がある娯楽の町だったと記憶していますが」
「さすがは学者だな、ミリア君」
「ありがとうございます」
 ミリアと呼ばれた女性は被っていた帽子の位置をずらした。照れ隠しのためだろうとは思うが、それはあまり言わないものである。
「……話を戻そう。マリエールの東には使われていない廃坑がある。かつて我々の国家が魔鉱石を掘った跡が広がっている。ここを拠点とする」
 魔鉱石。
 これをきちんと加工すると魔石になる。いわゆる魔石の原石のような存在だ。魔鉱石自体はただの岩石と同じ風貌だが加工することで綺麗な色に仕上がるという代物である。
 しかし大抵は魔獣から採取することがほとんどとなっており、魔鉱石自体から加工することは随分少なくなった。魔鉱から採掘できなくなったことも要因であり、結果として現在はガラクタばかりが残るゴーストタウンと化している。
「そこはゴーストタウンと変わらない状態になっているが、整備をすれば人が住む状況になっていることは変わりない。食べ物は無いが、保管するスペースはたくさんあるし、無限に通路が繋がっていることを考えると、最悪の事態が発生した時に作戦が立てやすい。……だが、あくまでもそこは作戦の基地に過ぎない。前線はもっとムロクス寄り……ムロクス王国の領土内にある場所に建てる。それがここだ」
 そう言って王は青い印がつけられた場所を指さす。
「アルシアと呼ばれるこの町は、港町だ。まあ、地図を見た限りでは海に面した場所としか解らないかもしれないが、どちらにせよここには確実に敵の拠点がある。ここをつぶすことで、逆に我々の拠点として使わせてもらう。居ぬきという形になるな」

第六章 8

 そう言ったのは、大臣たちのいた部屋に入ってきた一人の男だった。
 大臣はその声を聴いて、恐る恐るそちらを向いた。
 まさかここに来るとは思いもしなかったのだろう。
「……王、なぜここへ?」
「なに、大臣が自ら面接をしていると聞いたものでな。私も公務の合間を縫って見に行こうと思っていたまでだよ。そしたらこのようなことをしていたとは……」
「べ、別に間違ったことはしていないはずですよ。ただ私は公正に面接をしていただけです――」
「公正に、ね」
 王と呼ばれた男性は、そう言って鼻を鳴らした。
 王はアルスたちのほうを一瞥して、大臣に告げる。
「良い。この者たちは合格だ」
「しかしまだ面接は終わっていませんが――」
「お前は国王の命令が聞けぬ、というか。まあ、それも良いだろう。しかし、それによってどう響くかは知らないぞ。それだけは言っておく」
「……わ、解りました……」
 大臣はすっかり震えあがっていた。
 それを見た国王は小さく頭を下げる。
「大臣が迷惑をかけたようだな。私が代表して謝罪しよう。大変申し訳なかった」
「い、いや! 全然そんなことは思っていないですよ! 全然、全然! な、な?」
 アルスは国王が自分たちに頭を下げている状況に慌てているのか、大急ぎでそう仲間たちに訊ねた。
 マリーたちもアルスの突然の言葉に一瞬動揺したが、少しして状況を理解したのか、ゆっくりと頷いた。
「……まあ、いい。とりあえず君たちは合格した。急いで私についてきたまえ。これから会議を行う。作戦会議だ。戦争を行うための大事な会議を、な」
 その言葉を聞いてアルスたちは立ち上がると、すぐに王の後をついていった。

 ◇◇◇

 王の後をついていき、長い廊下を渡ると、そこには大きな会議室があった。
 中に入るとすでに何人かの人間が席に座っていた。アルスたちが入ってくるのを見て、それぞれなめるように確認しだす。
 王がドアの前にある椅子に腰かけて、アルスたちも空いている席に腰掛けたところで王が一息吐く。
「……さて、ここに君たちを集めたのはほかでもない。近く行うムロクスとの戦争の作戦会議をここで始めようということだ」
 王の言葉を聞いて、空気が張りつめるのをアルスは感じた。
「作戦会議とは言うが、実際にはどうするつもりだ。ここにいるメンバーでチームでも作るつもりか? 全員、ここに来るまでは初めて会った人間ばかりの寄せ集めというのに」
 そう言ったのは屈強な身体を持つ男だった。上半身は黒のタンクトップ、下半身は黒のズボンで身を包んでいる。鎧はきっと外しているのだろうが、それにしてもそれが見当たらない。いったいどこにやったのだろうか。
 そして少し遅れて――アルスはそれが目に入った。
 屈強な男の右横に立てかけられているそれは、紛れもなく剣だった。
 しかしその剣の大きさは一般のそれとはかけ離れている大きさだ。男の座高くらいの高さがあるそれは、血を吸ったのかどことなく黒く見える。
「いや、違う……」
 黒く見えるのは、刀身じゃなかった。
 厳密に言えば、刀身に微かに漂う気配。それが黒く靄のようになっているのだった。

第六章 7

「それじゃ今回の戦争はお互いがお互い、敵と認識しているわけではないということですか?」
 大臣はアルスの言葉に少し間をあけて頷いた。
「ああ、その通りだ。確かにその通りだよ。今回の戦争について、ムロクスは我が国を敵対関係と思っているものの、今回の戦争において明確に『敵』と認識しているわけではない。むしろ敵と認識しているのは私たちベスティリアだけだ。世界を危機に陥れかねない呪術を使うかもしれない――曖昧な嫌疑ではあるが、これを明らかにしなくてはならない。そして、我々はそれについて状況証拠を手に入れた。だから、戦争をするまでそう時間はかからないだろう。もっとも、そうでないのなら今回の戦争は起きるはずがない。はっきり言って、起こるべくして起きるのだよ」
 アルスは首を傾げつつも、話を続ける大臣の聞き手に回る。
「起こるべくして……起こる」
「世界には調和というものが必要だ。しかしながら調和は常に与えられるものではない。常に勝ち得なければならない。常に獲得せねばならない。そしてそれを得て使うことのできる権利を持てるのは『一つ』だけ。それ以外の国や組織は調和される側となるわけだ」
「調和される側にならないようにするのが、今のベスティリアの役目である……ということですか」
 こくり、と大臣は頷く。
「だってそうだろう? すべて受け手に回っていては何も始まらない。時代は自分で切り開かねばならない。してもらうのを待つだけじゃ何も始まらんよ。自分から行動せねばならない。行動することで結果として悪い方向へ行ったとしても、行動自体は評価される。世の中とは、案外そういう感じで回っているものだ」
「そういう感じ……ですか」
 アルスの言葉に大臣は小さく溜息を吐く。
「……それについて話をしていたわけではない。ベスティリアのために戦ってくれる人間であるかどうか、それを判断しなくてはならないのだよ。君たちは『仕事』でこれをこなそうというわけになるが、実際問題我々からしてみればそれは傍迷惑な行為にほかならない。だから、今一度問う。君たちはこの国のために――死ぬ覚悟はあるか?」
「死ぬ覚悟、と言われると難しい話ですけれど、仕事としては一生懸命頑張るつもりですよ。それではだめですか?」
「……そうではない。そうではないのだよ。間違っていないことじゃないが、仕事としてではなく……」
「もうよい、大臣。これ以上話をしても無駄だ。それに、解っていたのではないか? もともと国仕えではない人間に国のために死ねなど言っても無駄だ、と」

第六章 6

「……君たちが、新しい冒険者かね?」
 大臣と思われる男性がアルスたちに気づいたと同時に、そちらを向いてそう言った。
「はい、そうです」
「……まあ、いい。座り給え」
 手を差し出した方角にはソファがあった。それを見て失礼します、と言ってアルスたちはソファに腰掛けた。
「まあ、そんな面接のような凝り固まったものをする必要はない。だから、ある程度楽にしてくれて構わない。特に話すことも決まっている。ムロクスとベスティリアの大きな戦争について、これから簡単に話すことになるのだからな」
「ベスティリアとムロクスの戦争……主戦場は海の上になるのですか?」
 アルスが身を乗り出して、大臣に訊ねる。
 大臣はそれを聞いて、手を前に出す。
「まあ、それを話したいのはやまやまだが……。まずは私の自己紹介といこう。私はルシュミエイル・オータクハウルだ。いちおう、この国の大臣を務めているので、私のことは大臣と呼んでくれて構わない」
「……僕たちの自己紹介もしても?」
「ああ。まあ、別に名前だけで構わないぞ。はっきり言って、それ以外の情報は何ら必要無いからな」
「僕はアルス、そして彼女がマリー、そしてカスケル、エイミー、エヴァだ」
「ふむ。……見た感じ子供ばかりのようだが、まあ、これに関しては問題ない。来る者拒まず、だからな。はっきり言って、この国は今戦士が少なすぎる。だから信用できるようならばここにやってきただらけの冒険者でも構わん。使えるか使えないか、それだけで判断するのだから」
「……戦争の状況について、もう一度質問してもいいですか?」
「ああ、問題ない。主戦場はさっき君が言った通り海が中心になるわけではない。主戦場は我がベスティリア王国の中でムロクスに近いケーヘルグ島……火山の村や希望峰あたりを考えている。まあ、先ずはそこまでムロクスの軍を引っ張り出すことが大事だ。概ね、先ずはムロクス王国への侵攻、あくまでも先ほど言った場所は我が国の最終防衛線というだけに過ぎない」
 アルスはそれを聞いて小さく溜息を吐いた。
「まさかこんなことになるなんてな……」
「もともと我が国とムロクスの状態はいい状態では無かった。しかしながら、はっきり言って戦争をするまでの状態では無かった。だが、ムロクスが怪しげな呪術を開発したと言われているものでな……。場合によっては世界を滅ぼしかねないともいわれているのだよ。それの真偽がはっきりとしていないが、そのようなリスクを孕んでいることは紛れもない事実。ともなればこちらも何とかしなければならない。つまりはそういうことなのだ」
 まだ起きないであろうリスクをつぶすために、今回の戦争を行う。
 それはベスティリア的には間違っていないことなのかもしれないが、相手のムロクスにとってはどうなのだろうか? とアルスは考える。もともとアルスたちは人里離れた場所に住んでいたから二国の関係性について深く考えたことはない。

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